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2017年3月6日 成歩堂法律事務所




「ん、ん……っ」
 まともな声も出すことは不可能なのに、成歩堂は吐息を漏らして身を捩る。両足を左右に大きく開かされたその中心には深々とペニスが刺さっている。口には私の襟元から引き抜いたフリルタイを捻り込まれ、開いた状態で固定されていた。
 片足だけを肩に掛けて上半身を倒す。影で見えなくなっていた場所までが光に晒された。電気を消さずに抱くことは今までにでも何度もあったが、成歩堂は以前と同じように足を閉じようと身体を懸命に捻る。しかし、両手をネクタイで拘束されていては私のそれを締め付けるだけだった。
 締め付けを与えた礼として激しく抽出をした。突き刺さる私によって大きく変形している成歩堂のそこを凝視しながら。
「んぅっ!…っ!」
 揺する度に成歩堂は篭った声を上げる。喘ぐのが、呼吸が苦しいのか体勢がきついのか、わからなかった。
 床に寝かせたまま抱くのは背中が痛いのかもしれない。私はそんなささやかな労りを思い出し、結合したまま彼を抱き上げた。
────ッ」
 自分の体重で大きく飲み込む羽目になり、成歩堂は喉の奥で唸った。腕を突っ張り私との距離を置こうとする。辱めを与える私が憎くて堪らないだろう。が、両腕を拘束される彼は私の身体に寄り掛かるしかなかった。薄く笑い、抱き寄せて軽く突き上げる。
「んッ!」
 後ろに倒れまいと身体を強張らせた成歩堂のそこも同時に締まり、じんわりと快楽が生まれる。それが面白くて何度も突き上げる。その度に成歩堂はそこを緊張させた。
「!」
 何度目かの突き上げの際に、成歩堂の中に新たな精液が溢れた。腰を掴み、ぴったりと互いが重なった状態で私は射精していた。中が私のみで満たされる感覚に成歩堂は目を閉じて首を振る。
 腰と腕を支えることをやめれば、力を失った成歩堂の身体はずるずると崩れていった。そのまま床に横たわり、声を失った状態で平らな胸を上下させる。腰を引くと力を失ったペニスと共にいつ出したかもわからない白濁液が零れる。もう数回も達してるというのに、私はまたそれを自分で擦り上げると彼の中に沈めていた。
「…っ、う、んん」
 篭った声を上げて成歩堂はまた私を飲み込んだ。適度な締め付けはあるものの、何度も受け入れたせいかそこは心地よく私を包む。
 彼のペニスには一度も触れていなかった。最初の頃は前立腺を擦る私の動きに硬く勃起させていたが、それでも達することのできない責め苦にいつしか萎えてしまっていた。
 それでも構わなかった。
 この男は私に嘘をついたのだ。許せない。ひどく傷付けて、そうしたことを後悔させたい。その一心で動いていた。
 私に嘘をついたのはこの男に限ったことではない。それなのに、私の怒りは成歩堂一人にだけに向けられていた。
 嘘をついて、騙した。本当のことを言ってくれない。本当の私を見てくれない。信じたのに。信じていたのに。裏切られたと感じる心が泣き叫び、私を揺るがす。残酷な行動へと突き動かす。
 私は、彼を愛していた。誰よりも深く、自分を許していた。縋っていた。信頼していた。しかし、それは叶うことはなかった。
 一方的な自分が愚かで、情けなかった。こんな風に無理に身体を繋げても彼は私を愛してはくれない。
 わかってはいても、止まらなかった。
 成歩堂の両膝を掴み、思い切り胸へと押し付けた。身体がひっくり返りそうな程に傾いたところで固定し、腰を突き出して行き当たる場所にまで自分を挿入させた。そして、また精を吐き出す。
───ッ!」
 成歩堂はそれを両目を瞑って受け止めた。最後まで全てを彼に注ぎ込んだ後、私は腰を引き自分の衣服を整えた。力なく手足を投げ出す成歩堂の口からようやく布を取り除いた。大きく息を吸い込んだ彼の拘束していた腕も解放する。そうされても彼は動かなかった。
「成歩堂……」
 目の前に横たわる、憐れな男の横に膝をついた。濡れた瞳が動き私を捕らえる。その視線を指に纏いながら彼の頬を汚していた涙の線を拭う。成歩堂、ともう一度名前を呼ぶ。呼ばれた彼の唇が力なく動いた。多分、私の名を呼び返したのだろう。
 油断すればすぐに溢れそうになる罪悪感と、彼との間に流れる労りのような空気を遠ざけるために私は短く告げる。
「消えてくれ」
 蛍光灯で白々と照らされた室内を私の声が残酷に裂く。
「私は、君が……嫌いだ。憎い。もう二度と顔を見たくない」
 彼の黒い瞳が見開いたまま固まった。そのまま動きはなかった。が、それを見つめている私にはわかった。どんなに追い詰められた境遇でも、いつでも消えることのなかった光が揺らぎ、立ち消えていく。
 光が消えた後には───透明な涙が音もなく溢れ出した。





2017年3月7日 上級検事執務室・1202号




 担当していた事件は全て辞退した。身勝手な振る舞いに上層部は私を激しく責め立てたが、辞表を突きつけるとすぐに静かになった。しかしそれは受理されず、今は私の目の前にある。
 馬鹿らしくなり、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱へと投げ入れた。代わりに一枚メモを取り出し、心に決めていた一文を文字にしていく。
 検事・御剣怜侍は死を選ぶ。
 そのメモだけ残し、私は部屋を後にした。
 もう、ここには二度と戻らない。





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