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2016年12月15日 成歩堂法律事務所




 薄闇に舞うのは息遣い。音。繋がる音、衣擦れの音。骨と肉がぶつかり合う音。体重を乗せたソファが軋む音。
 成歩堂の身体に埋め込んだ私の性器が中に入り外に出ていく度に、何とも卑猥な音が耳に付く。それは彼の耳にも届いていることだろう。
 顔を私とは別の方向に向け、上下に揺さぶられる成歩堂の股間へと指を伸ばした。少々硬くなっている性器と指を絡め合わせた。
「んッ、……ぁ!」
 その刺激に、成歩堂は苦しげな声を上げてぎゅっと目を閉じた。だらりと下に落としていた右腕を持ち上げて唇に被せ、自らの声を封じる。
 腰の動きに気を取られているせいで上手く扱いてやることができなかった。けれども、そんながむしゃらな動きにも彼のそれは律儀に反応してみせた。
 ぐいぐいと中を突くとある一点を擦ったのか、成歩堂が背を仰け反らせる。見逃さずに腰の位置を微調整し、彼の喜ぶところを更に数回押した。手の中の昂りははち切れんばかりになり、締め付けもきつくなる。
 そうやって彼の感触を楽しんでいる内に己の奥から湧き上がって来るものを感じ、腰と手の動きが更に激しく強くなった。下にいる成歩堂は耐え切れないといったようにきつく目を閉じ、手の甲に歯を立てる。
───っ!」
 寸前で腰を引いた。同時に爆発する。
 汚れることも構わずに、見える限りの肌色に向かって白濁した液体を吐き出した。その刺激につられ成歩堂も先端から白を飛ばす。
「あ、ああ……」
 喪失感に成歩堂は無意味な声を漏らす。二人分の精液で成歩堂の下半身はどろどろになってしまっていた。拭き取ってやろうと手を伸ばした。達したばかりのそれに触れられ怒るかと思ったが、成歩堂は力なくそこに横たわっているだけだった。
 何度か性行為を繰り返した結果。こうして最後には、二人とも達することが一連の流れとなっていた。
 最初の時こそ狭くて狭くて、千切られてしまいそうだったが、何度か行為を重ねる度に彼の身体は変化していった。それは成歩堂も感じていることだろう。
 彼は、私の手の中で果てる事をいつもいつも嫌がっていた。だがその抵抗も虚しく最期には声を上げて精を吐き出す。私はそれを仕方のないことだと捉えていた。絶えず与えられる痛みに順応し、やり過ごそうと意識と身体が働くのは人間として当然だろう。それに、そうなるように仕向け動いているのは私の方なのだ。
「なんで、こんなこと……」
 シャツを羽織りその上にベストを重ね、服装を整えていると成歩堂がぽつりと呟いた。あまりに掠れている声だったので最初、独り言だと思った。が、どうやら私へと向けられているようだった。
「理由があるんだろ?」
「理由?」
「こんなことするのは、ぼくが憎いからか?」
 潰れた声で成歩堂は言う。私が答えるよりも先に成歩堂の感情が爆発した。俯かせていた顔を上げ、側にいる私を睨み付けた。
「ぼくが憎いんだろ!?それならもっと……!こんなやり方じゃなくて!」
 そう怒鳴る成歩堂は怒りで身体が震えている。
「ああ、そうだ。私は君が憎い」
 かっと成歩堂の瞳が怒りに見開かれるのと、彼の右手がバネのように跳ね上がるのは同時だった。
 頬を殴ろうとした手を掴んで阻んだ。その勢いを逆に利用して再びソファへと縫い止めた。体重を掛けられて、あっけなく彼の身体は再度押し倒されてしまった。甲を走る痛みと、ひど過ぎる怒りに成歩堂は背を仰け反らせて喘いだ。しかしすかさず息を吸い込み、激しい勢いで私を睨む。
「御剣……!」
 ここまで私の名を激しく呼ぶ人間はいまだかつて存在しない。私の名を、この世の全ての憎しみと同等のものとして呼ぶのは。
 突然拘束されていた手首を解放されたことに成歩堂は虚をつかれた。私はその好機を逃さなかった。両腿を割って、先程まで繋がっていた部分へと指を滑り込ませる。成歩堂は狼狽して腰を引き私を押し返そうとした。しかし、遅い。
 すでに張り詰めていた己を自分自身の手で導き、結合させる。成歩堂は呻く。
 すぐに馴染み、出し入れするに何の抵抗も感じなくなった。前後に腰を振ると成歩堂の全身が私のその動きに引きずられて、動く。手を解放したことで、また殴り掛かってくるかと思ったがそれは杞憂に終わった。成歩堂は腕を自分の顔の上に持ち上げ、私から表情を隠していた。
 揺さ振られる衝撃に時折、腕がずれて彼の口元が覗く。きつく食い縛られた唇。私は彼を犯しながら、待った。彼がもう一度、私の名を呼ぶ瞬間を。
 ビデオカメラを仕掛けたというのは方便ではない。私が吐いた嘘は仕掛けた時期だけだ。それも、仕掛けたなどという大掛かりな事をしたわけではない。何度目かの訪問の時に、わざわざ電源を入れたままのビデオカメラを彼のデスクの上に放置したのだ。そしてそのまま彼との性行為に及んだ。必死に抵抗する彼はその存在に全く気がつかないようだった。
 以前、空のDVDをわざと見せたときのように怒り狂っている状態では無理もない。
 私によって怒鳴り、喘ぎ、最後には獣が鳴いているような声を上げて果てる彼が記録されている。
 これをちらつかせれば、成歩堂は私の要求を拒否出来なくなるのだ。実際にそれを外部に漏らすつもりは毛頭ない。が、私がそのつもりであっても成歩堂にはわからないだろう。だから彼は、嫌々ながらも私に抱かれる羽目となる。
 予想していなかったのは───私が何度もここを訪れてしまうことだった。遠ざけるには一度、彼を抱くだけでよかったはずだ。それだけで彼は私と接点を持つことはしなくなるだろう。しかし、彼はしつこかった。
 あの悪夢と共に、毎夜成歩堂が現れるのだ。それは九歳の姿だったり、今の大人の姿だったり。法廷に立つ姿だったり、裸で喘ぐ姿だったり。
 君は、私の夢にまで忍び込んでくるつもりか。それを責めるようにして彼を訪れては、無理に抱いて鬱憤を晴らした。
 脅迫などと、私はいつからこのような卑劣な手を使うようになったのだろう。犯罪を誰よりも、何よりも憎んでいるはずなのに。
 何てことはない。私は殺人者なのだ。最初から汚れているこの手を、今更大事にすることもない。
「…っ…ッ、…」
 徐々に閉じかけてしまう彼の両足を更に開かせた。腿を抱え込んで自分の腹に密着させる。そうすると二人の身体が隙間なく繋がることができるのだ。
 成歩堂は自分の顔を隠すことも忘れ、 両手を使って私を押し返そうとする。しかしそれは絶えず行われる腰の動きによってままならない。
───わかるか?成歩堂」
 動きつつ問い掛けた。
「君が私を飲み込んでいることを」
 もう一度足を開かせ、二人が結合するその場所に指を這わせた。薄い皮膚が大きく口を開いて私を咥えていることを、視線と指で確認する。相手にも知らせるように指でゆっくりとなぞってやった。成歩堂が息を飲む。
「浅ましく締め付けてもくる。君は、いやらしい男だな」
 苦しげに眉を寄せ、視線を当たりに飛ばしていた成歩堂の瞳が私に移動する。
「御剣…っ」
 必死に耐えていた声が私の名前によって解放された。
 それだけで、ぞくぞくした。
「御剣っ!みつるぎ…ッ!」
 倒れこむようにして彼の身体を抱き、激しく前後に動く私に翻弄されながらも成歩堂は必死に叫んだ。怒りの滲む声。それを耳元で聞く度に、彼の中に在るペニスが膨張する気がした。
 私は、成歩堂に名前を呼ばれながら射精した。
 みっちりとペニスが埋め込まれたそこに、さらに液体が流し込まれる。成歩堂の中に私が入っていく。
 私は言い表すことの出来ない高揚感に息を吐くことしかできなかった。その下で成歩堂が低く呻いた。






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