「やっ、これ、いやだっ…!」
恥ずかしいけれど、ぼくが行為の最中に否定の言葉を言うのはいつものことだ。同性に、しかも御剣に身体を開いて性器や受け入れる場所を弄られたり見られたりするのはとても恥ずかしく、自分の意志やプライドといったものが他人の手でぐずぐずと崩されていくような感覚に陥ってしまう。しかし羞恥と快楽は紙一重で、その時に居た堪れないほどの興奮を覚えていることも事実だと御剣は知っているから、ぼくがどんなに嫌がっても愛撫の手は決して止めない。
でも、勘違いしないでほしいのはいつもそれが心と矛盾しているというわけではないということだ。
現にぼくは今、本気で嫌がっていた。
御剣はぼくの足の間に身体を置き、その手の中には事務所の飾り付け用に真宵ちゃんが買ったという赤いリボンがある。そして、それは──ぼくの固く張り詰めた性器に巻かれていた。
少しでも足を真ん中に集めようとすれば、御剣に睨まれる。何度かそのやり取りを繰り返しても、一向に閉じようとすることをやめないぼくに痺れを切らしたのだろう。御剣が右の手の平で内腿を軽く叩いた。
「っ」
「少しは我慢できないのか?……はしたない」
だって、と言い訳するのも悔しくて両手で自分の口を覆った。
確かに自分の身体ははしたないのかもしれない。
叩かれた痛みは一瞬で消え、すぐに忘れた。それよりも性器を縛られることに興奮を覚え、腰が微かに揺れることを止められない。嫌で堪らないはずなのに。
最初は多分、緩めに巻かれていたはずだ。しかし御剣の指に触れられ赤いもので束縛を受ける内に、ぼくのそれは確実に熱を持ちその身をたぎらせていった。痛くはないものの、きついと感じるほどに自分が性器を勃起させているのだと思うと、恥ずかしさに目も開けていられない。
「できたぞ、成歩堂。自分で見てみろ」
でも、御剣はそれすら許してくれない。
指が離れ、圧迫だけを感じる自分のそれを、ぼくは恐る恐る見た。
「ククッ……君は縛られるのも好きなようだな」
否定しようとしたぼくのペニスを右手に乗せて、御剣は根元からゆっくりと撫で上げる。亀頭は剥きだしのまま、その下の竿にぐるぐるとリボンを巻き付けられ、異様な姿になっているペニスを御剣はいとおしげに見つめた。
「縛っている最中からこんなに興奮して、いやらしい男だ。……これ以上大きくすると苦しいだろう?」
そう言いながら先端に見える小さな穴を人差し指で撫でた。
言葉も仕草もこちらを思いやるような言い方をして、やってることは射精を制限しつつ愛撫を与えるひどい行為だ。
「うる、さい…ッ!」
ぼくは涙目で相手を睨み、悪態をつくことしかできない。
紐を外そうと両腕を少しでも動かすと、御剣は縛ってあるペニスを弄ってくるのだ。痛みを感じるほど強い刺激だったり、物足りなさについ腰を動かしてしまうほどにもどかしい愛撫だったり。緩急をつけた責めにぼくはそのたびに悶えて抵抗を忘れてしまう。
「今日は君の日だから、こうしてお祝いをしているのだ」
囁きながら御剣がぼくの上から身を引いた。解放されたとは全く思えなかった。むしろ嫌な予感の方が大きく、でもぼくはベッドの上から動けずに相手の動きをただ見守っていた。
戻ってきた御剣の手の中にあったものは、ぼくを絶句させるに申し分ないものだった。ピンク色に透き通った物体は、どう見ても男性器を模っている。根元にはボタンがついていた。御剣は上品な顔に似合わないそれを持ち、呆然としているぼくに構わず足の間に自分の身体を捻じ込んできた。
「足を開いてくれ。君の中に入れたい」
「や、やだよ!」
真面目な顔でそう言われてもはいそうですかというわけがない。後ずさりしようとしたところを、リボンで覆われているペニスを握られ身動きが取れなくなる。
「君へのプレゼントだ」
「嘘だ!お前、ぜったいそれ前から持ってただろ!今日のためとかじゃなくて!」
ローションで先端を濡らしたそれを、ぐいぐいと押し付けてくる。縛られて玩具を突っ込まれるなんて冗談じゃない。
と、思ったけれど御剣は冗談のつもりでもなく本気だった。狭い穴は度重なる攻撃に負け、少しだけ開いた。そこをすかさず押し入ってくる。
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