男同士のセックスには時間がとても掛かる。そして、手間もとても掛かる。
 キスや愛撫でお互いの熱を高めて繋がるという誰もが本能的に、そして発作的に行える行為。しかし相手が男となれば繋がるだけでも一苦労だ。時間と手間を掛けてそこをほぐし、挿入する際も一気にではなくゆっくりと。それでも成歩堂の顔は痛みで歪むから、私はどうしても腰を引いてしまう。しかし成歩堂は足を私の腰に絡め、ふてぶてしく笑うのだ。私はその笑いに挑発され、そして何よりも彼の中が熱くて恋しくて堪らなくなって、自分の腰を彼の身体に深く埋める。
 私は繋がる瞬間にいつもする、彼とのその駆け引きがとても好きだった。
 一度挿入すれば迷いも消える。腰を前後に動かす動作は呼吸をすると同じくらいに簡単で、私は獣のように成歩堂を攻める。彼の名前と好きだという言葉を交互に囁きながら。成歩堂は喘ぎながらそれを受け止める。途切れ途切れに返そうとする。
 この行為が終われば。もう二度と言わないからな、と彼が可愛げもなく嘘をつくことを知っているから。だから私はそれに夢中になる。一心不乱になる。彼を私で満たして、何度でも好きと言わせたい。彼がこの後我に返り、自分を恥じて悔やむくらいに甘く鳴かせたい。
 
 この時だけ私は検事ではなくなる。一人の、ただの男となる。