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ああ、ぼくも約束をしたらよかったな。 「弁護士はピンチのときほどふてぶてしく笑うものよ」 ……そう言ったのは、誰だっけ?
「お腹、いっぱい!」 自分のお腹をさすり、彼女は満面の笑みを浮かべた。 「よくお姉ちゃんと食べに行ってたの?」 あいまいな答え方をしたぼくを全く気にかけない様子で、真宵ちゃんは笑った。 ケラケラと笑いながら、あっさりと死んだ姉の話題をぼくに振る。 (まぁ、こう見えてもあの所長の妹だしな……) 「あ、見てなるほどくん!あそこにもラーメン屋さんがあるよ!」 なるほどくん。なるほどくん…… (ああ、やっぱ似てるな……) 懐かしさと心地よさに、思わず笑みがこぼれる。でも、その後すぐに我に返る。 真宵ちゃんの髪はあの人より黒い。 事務所に着き、夕食のため中断していた仕事を再開してしばらくしたところで。 「眠くなっちゃった…ちょっと寝てもいい?」 言うが早いが真宵ちゃんはソファに横たわり、眠りの世界へと落ちていった。 (……だよなぁ、やっぱ) 父親を早くに亡くし、母親も行方不明。たった一人の姉も無残に殺され。 (……所長、ぼく一人じゃ頼りないですか?) 背中に圧し掛かるプレッシャー。拭いきれない不安感に、震える手を握り締めた。 「ずるいな、千尋さんは」 自分で言って、どきりとする。チヒロさん……名前で呼んだこと、あったっけ? (本当にずるいよ、千尋さんは) 自分の気持ちに気付かせる暇も与えず、ぼくに法廷テクニックを叩き込んで。 (泣くな) 真宵ちゃんが起きたらどうするんだ。 (泣くな、泣くな) 右手で口を押さえる。 (泣くな) 駄目だ。 ───弁護士はピンチのときほどふてぶてしく笑うものよ ふいに現れた幻想。彼女の声。 「ピンチのときほど、か……」 溢れ出そうになった涙は、今の驚きのおかげで引っ込んでいた。 (……また助けられちゃったなぁ) 男として情けないとは思いつつも、心が満たされた感覚に安堵する。 「千尋さん」 彼女に触れられない悲しい現実は、逆転することなんて出来ない。
─── 千尋さん、ぼくはあなたが好きでした。
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1の攻略本の、ラーメン食べに行った漫画の後の感じで。 千尋さんが最後に会う約束してたのって真宵ちゃんだけ…で、いいのかぁ。 なるほどくんと真宵ちゃんと三人で食事に行くつもりだったのかな。それがわからん。 ぼくの前を、というのは冥ちゃんの台詞からきてます。いつか絶対、千尋さんの年を越えてしまうし 弁護士としての経歴も上になっちゃうでしょう。それでもなるほどくんにとって千尋さんは師匠なんです。 永遠のおっかけっこです。切な悲しい。 |
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