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「御剣、本気で言ってるのか……?」 成歩堂は呆然とした様子で呟いた。目を、そのまま見開いて。 勢いに任せてぶつけた言葉は、まぎれもなく真実だ。嘘ではない。 そして最後に、私の言葉の真意を問うた。 しばらく、重い空気が部屋の中を流れる。 「御剣!!」 驚いた成歩堂が、身を挺して私の手をかばった。その彼の手を、力を込めて振り払う。 「御剣……御剣!!」 涙交じりの声で、成歩堂が腕にしがみついてきた。 「は、なせ……っ!」 全身の体重を掛けてきた成歩堂の勢いに押され、ともに床へ倒れてしまった。 「……貴様は!!」 そのまま馬乗りになって、胸倉を掴む。 「貴様がその押し付けがましい正義感で、私を滅茶苦茶にしたのだ! 首を絞める形となっていた私の手を、成歩堂は苦しげに押し返そうとした。 「教えてくれ……私はこれから、どう生きたらいい? 腕の力を抜いて、私は彼との距離を少しだけ広げた。 「……君は、君が正しいと思う道を行けばいい」 思わず笑ってしまった。笑みを浮かべたまま、成歩堂に詰め寄る。 「私の判断基準はなんだったと思う?考えなくてもわかるだろう?」 ばん、と音を立てて右手を床に打ちつけた。びくりと身体を揺らして、成歩堂は私を見る。 「いきなり一人で立たされても、歩けない。私は今まで狩魔豪という人間に依存していた」 ───完璧という名のもとに有罪を立証する…すべての被告人を、有罪に。 検事となってからの4年間。私はそのルールとともに法廷に立っていた。 「今の私はそれすら出来ない!私は必要ないんだよ。君に負けた、検事など!」 固い床に何度も拳をぶつける。傷がついているはずの手のひらは、不思議と痛みは感じなかった。 「……離せ!成歩堂!」 突き飛ばそうと腕を振る。その腕を抱きしめて、顔を伏せて。成歩堂は何度も何度も呟いた。 「君は何も悪くない。判決も、被告も、証人も……」 ぽつりと彼は呟いた。そして顔を上げる。 「悪いのはぼくだ、御剣」 泣いているかと思った。でも彼は泣いていなかった。 「完璧な君を負かした、ぼくが悪いんだ。君は悪くない」 (どうして、君はいつも) 先に傷つけたのは自分だ。憎んでいる、と言った事も嘘ではない。 (そんなにも、私を信じる……?) 頬に涙を感じた。泣いてるのは彼じゃない。私の方だ。 「悪いのはぼくなんだから…ぼくを罰すればいい。君は罰を受ける必要なんてないんだよ」 痛む手を動かす。そして、彼の頬に両手を添えた。 「……さすがだな、君は。君が言い切ることは、すべて真実に聞こえる」 瞳を正面から合わせ、笑う。 笑うと目尻にたまった涙が頬に落ちていった。 ・ 私の部屋には、音を発するものがない。 「………ん……」 身じろぎをして、成歩堂が声を発した。起きるかと思ってしばらく見ていたが、どうやら起きる様子もない。 (………手当てをするという程の、怪我ではないらしいな) 狭いベットに男二人で眠るには、身を寄せあうしかない。 罰してくれ、と彼は言った。そして私は、彼を罰した。 手ひどく彼を犯したことは、実は初めてではない。 (こんな) 「私は……………」 (こんな関係は) 「私は、成歩堂を」 (まともじゃない) 「愛している…………」 言葉にした途端、涙が溢れた。 私はここにいてはならない。 法廷に立っても、有罪と真実の間で動けなくなる役立たずの検事とともに。 殺してしまおう。
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検事失踪の理由。それは重い現実から逃げ出すためだったと思います。 1-4は大エンディングだったと思うけど、よくよく考えたらそうでもないよね。 なるほど君(プレイヤー)は無実を勝ち取ってすっきりしても、 ミタンは残酷すぎた真実を突きつけられて… 失踪するのも仕方がない。 |
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