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これは由々しき事態である。
「……それでどうなったの」 くぅっ!と真宵ちゃんは両手の拳を握る。春美ちゃんも悲しそうに眉毛を下げて、ぼくを見た。
……しかし、カードのトレードをするには場所が悪すぎた。 騒がしいと周りに注意され、真宵ちゃんたちは裁判所から追い出されることとなってしまった。 「悔しい!悔しいよ、なるほどくん!」 少女たちの悲しげな表情に、ぼくはあるひとつの決意をした。 「真宵ちゃん、春美ちゃん。行くよ」 目を丸くして二人はぼくを見上げた。ぼくはニヤリと笑って宣言した。 「討ち入りだよ」
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12月14日 午後5時 警察署 「アンタたち、どうしたッス!?」 日曜だというのに、3人揃って現れたぼくたちをイトノコ刑事は驚いて呼び止めた。 「討ち入りです!」 真宵ちゃんと春美ちゃんが、声を合わせ勇んで答えるとイトノコさんはもっと目を丸くした。 「イトノコさん、御剣はここに来てるって聞いたんですけど」 簡単に事情を説明すると、イトノコさんの目が次第につり上がっていった。 「それはひどいッス!自分も討ち入りに参加するッス!」 御剣に忠誠を誓っているとはいえ、彼も警察官だ。この事実を放っておく事が出来ないらしい。 「これより突入いたす!」
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12月14日 午後5時15分 警察署 資料室 「御剣検事―!御剣検事はどこだー!」 真宵ちゃんが御剣の名前を連呼しながら、資料室のドアを開けた。しかしそこには誰もいない。 「逃げたッスね!」 歯軋りをする真宵ちゃんとイトノコさんの横をすり抜け、春美ちゃんが中にあったテーブルを調べ始めた。 「なるほどくん!」 側に合った椅子に触れ、春美ちゃんは声を上げる。 「まだあたたかいです!近くにいるはずですわ!」 矢張の真似をして、ぼくはぐっと親指を立ててみせた。そしてイトノコさんを振り返る。 「イトノコさん!他に御剣が行きそうな場所は?」 彼の台詞を聞くやいなや、ぼくたちは資料室から走り出て休憩室へと向かった。
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12月14日 午後5時25分 警察署 休憩室 ハッタリで有名な弁護士、図体のでかい刑事、妙な格好をした少女二人が勢いよく休憩室に 「あのフリルは人目を引くはず!探せぇ〜」 被害者である、カードを奪われた真宵ちゃんは一番張り切っていた。 「なるほどくん、どうかしたのですか?」 一人考え込んでいたぼくを、春美ちゃんが気遣わしげに見上げていた。 「何でもないよ。春美ちゃん、疲れてない?」 そう広くもない休憩室を、イトノコさんと真宵ちゃんが走り回っている。 「御剣検事、ここでお茶飲んでまた資料室に戻ったんだって!行くよ、二人とも!」 二人はぼくの言葉を全く無視して、走りはじめた。どうやら彼のことはすっかり忘れているようだ。
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12月14日 午後5時40分 警察署 資料室 「御剣検事、発見!!」 ぼくが少し遅れて資料室に到着すると、霊媒師二人に詰め寄られて困惑した様子の御剣がいた。 「どういうことだ、成歩堂」 ぼくの返事に御剣の眉間のしわはより一層深くなった。 「あたしのカード、返してもらいます!」 真宵ちゃんに手を差し出され、御剣はやっと理解したらしい。胸のポケットを探り、一枚のカードを取り出した。 「すまなかった」 御剣としては、ただカードを預かっていただけのつもりなのだろう。オーバーに喜ばれて、また眉をひそめた。 「……何の真似だ、成歩堂」 なかなか楽しかったよ、と言って笑いかけると御剣は呆れたように首を振った。 「イトノコさんにもお礼言っといてね」 独り言のように呟いて、御剣は手招きをする。ぼくは何も考えず、椅子に座る彼の前まで進んだ。 「わぁっ!」 いきなり腕を強く引かれて、御剣の膝の上に座るような格好になってしまった。 「何するんだよ、御剣!」 ぺろりと後ろから耳を舐められた。寒気が走り、ぼくは身体を揺らした。 「…討ち入りをした47人の義士は、その後自ら命を絶ったのだよ」 答える代わりに御剣はぼくの頬に手を当て、無理矢理後ろに向かせてキスをしてきた。 「い、異議あり!…なんだよ、それっ!」 やっと離してくれたと思ったら、一度立たされる。 「あまり大きな声を出すと、人が来るぞ」 そう言ってぼくはこれ以上声を出さないために、御剣の肩に思いっきり噛み付いた。
(次に復讐するときは絶対、ぼくが君を泣かしてやる!)
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