index > top >

 



 力が入らない。
 自分の力ではもう、指一本を動かす事すら出来なかった。でもぼくの身体は動いていた。下から突き上げられて、衝撃を受ける度に手足の先が微かにゆらりと動く。
 ぼくと御剣は向かい合って交わっていた。御剣の腰の上に乗せられて、両足を開かされた格好で貫かれる。
 突き上げられ、そしてすぐに落ちるぼくの腰と、突き上げ、即座にひく御剣の腰と。ふたつの動きがうまく重なり合ってじんとした快楽を呼ぶ。結合部分からはくちゅ、くちゅ、と濡れた音が絶えず生まれていた。お互いに向かい合うこの体勢。俯けば勃起した自分のものと、御剣と繋がる部分が嫌でも目に入る。恥ずかしくて恥ずかしくてぼくは顔を背けてそこから目を離そうと試みた。

「…ぁっ…!」

 しかしそれは許されなかった。
 後ろから伸びてきた手のひらがぼくの顎を掴んだ。首を振って嫌がろうにもその手の力は緩むことがない。強く掴まれる痛みと、その間にもずっと続く揺さぶりに悔しくも目に涙が浮かぶ。
 ぼくの背中を支えているもうひとつの身体があった。仰け反るように背を動かしても、それに阻まれぼくの身体はそれ以上後ろに倒れることはなかった。
目の届かない後ろにいるのは、目の前の男ととてもよく似た風貌を持つ男。マイルズ・エッジワース検事。彼は御剣に犯されるぼくの身体を後ろから抱え込んでいた。背後から脇の下に彼の両手を差し入れられ、まともに動くことすら叶わない。ただでさえ力が入らないのに。

「もう、や、め……」
「まだだ、成歩堂」

 掠れた懇願は簡単に却下される。睨もうとしたぼくを乗せたまま御剣はまた腰を動かした。触れ合う部分が擦れて甘い刺激が体内を走った。時折、刺激に負けて内側に丸め込まれるぼくの足の指を見て御剣は嬉しそうに微笑む。その顔を殴ってやろうかと思った。けれどそんな力は残っていない。
 声もうまく出せなかった。後ろから一本の手が伸びてきていて、その指が二本、ぼくの口内へと挿入されていたからだ。柔らかな舌を弄ぶ指の存在に邪魔されて話すことが出来なかった。それどころか唾液を飲み込むことすら出来なくなって、ぼくは口からそれをだらしなく溢れさせた。
 そして、彼のもう一本の腕は。

「ン…ッ!」

 御剣と同じ長くて白い指。それがぼくのものに絡まる。その様をぼくは唾液で口元を汚しながら見ていた。ぼくの見ている目の前でそれは動き出す。絡まって握られて、上下に扱き始める。
 思わずくぐもった声を上げてしまった。
 挿入されている時に竿を扱かれるのはいつもの事だ。珍しくもない。けれども、今は状況が全く異なっている。御剣の両手はぼくの足を押さえたままだ。それなのに別の腕がぼくのものを攻めている。
 他人の手だ。頭ではそう理解しているし意識もそう捉えていた。
 二人の男に同時に身体を貪られる行為は初めてで、拒絶したい気持ちも、胸を焼かれるかのような羞恥心も、そして食い尽くされるような恐怖もあった。許されるものならば今すぐ逃げ出したい。もうやめてほしい。終わりにしてほしい。
 でもぼくの身体は自分の言うことを聞いてくれなかった。
 手のひら、指の腹、指と指の股をも使って何度も何度も激しく擦られる。割れた先端を親指で強く押され。亀頭の裏側をくすぐるように刺激され。

「ン……ァッ!」

 性器への直接的な刺激に気が逸れていたぼくの身体が、また大きく揺さぶられた。
 向き合う自分から意識が離れた事に腹を立てたのだろうか。御剣が緩やかに腰を動かし始める。エッジワース検事も手を止めない。後ろに当たる熱い感触が彼の興奮を物語っていた。膨張し硬くなった彼の欲望を背中に意識したまま、ぼくは御剣に貫かれる。

「…っあ、あッ…」

 口から検事の手が離れた。濡れた指がゆっくりと下ろされていくのをぼくは薄目で窺った。御剣によく似た、でも違う指はぼくの胸に辿り着き、その周囲の皮膚を這いずり回る。先端を時々摘んで、かと思えばすぐに放して。微かな痛みは甘い快感となり、ぼくの思考を壊していった。

「ん、あ、あ、っ…」

 ぼくの身体を気遣ってか、御剣のピストン運動はいつもより緩慢で勢いがない。けれどもそれが余計にぼくを煽っていた。御剣の動きに合わせて、ゆっくりと零れる自分の喘ぎに恥じている余裕もなくなってしまう。小刻みに震える自分の中の存在にただただ焦れる。もっと、と先を強請りたくなる。

「は、…ぁッ」

 後ろから耳を食まれた。検事の荒い呼吸が首の筋に否応なく当たり、それがまた新たな快楽となる。ぼくは思わず声を上げてしまった。御剣の顔が瞬間歪む。中に入った奴のものがより一層硬度を増した気がした。

「You…look very…」

 耳元に落とされる低い英語の囁き。聞き取れずにぼくは振り返ろうとした。けれども彼の舌に阻まれる。

「な、に……」

 右耳朶を蹂躙されながらぼくはもつれた舌で聞き返した。下半身の窄まりから内部へ、上半身から外部の皮膚へ。二人の人間から同時に愛撫と侵入を許したぼくの脳では彼の台詞が全く理解できなかった。もっとも、例え意識がはっきりしていたとしても母国語以外で紡ぎ出される彼の言語を理解できたはずもないけれど。
 ふ、と御剣はぼくを笑う。腰の動きに合わせて徐々に唇の端を吊り上げていく。額に汗を浮かべて微笑む御剣はぼくの足を抱え直し、突き上げた。より深く自分をぼくの中に差し込むように。
 いつも二人で行うセックスに第三者を介入させることは御剣の興奮と嗜虐心を最高に煽っているらしかった。上気した頬で、掠れた声で御剣は彼の言葉を日本語に直した。

「君は淫乱な男だな……と彼は言ったのだよ」

 天と地がひっくり返る。気が付いたら身体をうつ伏せにされていた。深く入り込みすぎて、もう抜けないんじゃないかと思えていた御剣の欲望があっさりと抜かれる。

「……He likes taking me from the back.」

 床に両手をついて俯くぼくの頭の上から英語が降ってきた。それは御剣のもの。声の主はわかっても内容まではわからなかった。御剣がぼくにわからない言葉で彼に何かを言った。そのことだけがわかった。
 I see. しばらくして、エッジワース検事がそれに短く答えた。ぼくでもわかる簡単な英語。何かを承諾したのだと理解できた。
 腰に手が添えられ、掴んでそのまま引き上げられる。後ろに回っていた検事が一人状況のわからないぼくの身体を好きに動かしていた。背中を押されて身体が反る。挿入できる位置まで腰を上げられても、ぼくはもう身を捩ることすらできなかった。そうされてようやく、ぼくは御剣の言葉の意味も何となくわかった気がした。
 ひたりと当たる熱。さっきまでのものとは違う、それは二本目のもの。
 ぼくは目を瞑る。落としたまぶたの向こう側で御剣が動く。頬に触れるかと思ったけど、違った。御剣の手はぼくの頬を通り過ぎてやんわりと髪を掴む。それに促されて俯いていた顔が持ち上がった。顔の間近に御剣が立つ気配。
 ぼくはさらにきつく目を瞑った。
 閉じた唇に、今まで自分を貫いていた熱の棒が押し当てられているのを感じながら。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


なんだかすみません。ただこういうシチュのエロが書きたかった…だけなんです。
男三人というか攻め二人+受け一人って感じに!
うんでもいい加減自制します。ほんと。


 

index > top > S.U.S