わーずわーずの魔法


『いぎあり!』

それは、今でこそ自分の仕事によく馴染んだ言葉だけれど。
九歳の夏から冬までの間、ぼくは夢中でその言葉を叫んでいた。
ゲームもテレビ番組のヒーローごっこもこんな風には思わせてくれなかった。
幼いぼくは頬を紅潮させ、毎日の放課後を目覚めの時から心待ちにするようになった。
それほどまでにその新しい遊びに夢中になっていたのだ。
なんてたのしいゲームなんだろう、と。





そんなぼくの隣りにはいつも、笑っている君がいた。
ぼくたちは意味のわからない言葉をたどたどしく使い、もう一人の級友にも役を与え、子供ながらの裁判ごっこを何度も繰り返しやった。
君が教えてくれた難しい言葉たちはもう忘れてしまったけれど、今でもぼくは覚えているよ。
君があのゲームの最中によく、『いぎあり!』と叫んでいたときのことを。

君があの学級裁判の時、『いぎあり!』と叫んだから、ぼくたちはそれを『いぎありゲーム』と呼んでいたんだ。
裁判なんて意味もわからないくせに。

そしてぼくはそれからよく『いぎあり』って言うようになったんだ。
君と一緒にいるためのおまじないみたいに。





こうして大人になった今。ぼくは法廷で叫んだ。

「異議あり!」

君をこの手に取り戻す、祈りの言葉のようにそれを。






もじぴったんの曲が元ネタです
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