02.言葉を封じるキス
何やっているのだろう。どうして、どうして、こんなこと。
心とは逆に身体は止まらなかった。
息が苦しいのに、必死に求めるのは空気ではない。
今の私が求めるのは、相手の唇だけ。
「御剣、す」
言い掛けた声を唇ごと奪った。
その言葉は言わせない。
もし言わせてしまったら。もし聞いてしまったら。
私たちは壊れる。親友でもライバルでもいられなくなる。
そんな二人の先には一体何があるのだろう。
浮かんだ不安をかき消すため、成歩堂の温かい舌を吸った。
くぐもった声で呻いて身を捩る。
彼に言わせてはならない。
私に言わせてはならない。
相手に対するこの想いを。そしてそれにつけた名前を。
一度それを口にしてしまえば、坂道を転げ落ちるように止められなくなる。
私は、それが怖い。
「……意気地なし」
わずかにした息継ぎの合間に。成歩堂がぽつりと呟いた。
言葉でも表情でも答えずに、私は再び唇を被せた。
意気地がないと罵られようとも私は彼の口を封じなければならなかった。
彼にはきっとこの矛盾は知られている。