top>うら> 愛と言い訳で欲望は

 


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理性と感覚のぎりぎりの間で、ぼくが何を考えているか。
───ねぇ、君にそれがわかるの?

 


「嫌なのか?」

閉じたままだった目を、開く。すると眉を寄せた御剣が、ぼくを覗き込んでいた。

「何が」

この状況で今更ながらそんなことを聞いてくる御剣が腹ただしくて、ぼくは憮然と聞き返した。

「君が私に抱かれることが、だ」
「!!はっきり言うなー!恥ずかしい!」
「ム、すまない」

しゅんと頭を下げる御剣に、思わずため息がこぼれる。
見てると、御剣はそのままぼくのシャツのボタンを留め始めた。

「いやいやいや……待った!!」

ぴたり、と動きを止めた御剣の頭を軽く小突く。むっとしたように御剣がぼくを睨んだ。

「誰もやめろなんて言ってないだろ」
「……そうか」

再度、御剣が頭を下げた。落ち込んでいると思ったら、ごそごそと手を動かし始めた。
もう立ち直ったらしい。わき腹を撫でられて、くすぐったさと快感でぼくは身体を揺らした。

「……君はいつもそうだな」
「何、が……?」

吐息交じりの呟きで聞き返す。半裸にされて、首筋を舐められて、思わず声が漏れそうになる。

「私を見ていない。ずっと目を閉じたままだ……」
「そ…うか?……別に、意味はないよ………ただ」

与えられた快感にびくりと身体が震えて、ぼくは最後まで言えなかった。

「ただ?」
「…あ……んッ……」

襲ってくる感覚に、言葉にする事すらままならない。ぎゅっと目をつぶり、首を振る。

「答えろ、成歩堂」
「……ぁ…んんっ……」

快感に理性が飛んでしまう。───ただ、怖い。

「怖い……?なぜだ?」

ぼくは目をつぶったまま御剣の身体にしがみついた。その頭を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられた。
ぼくは薄く目を開ける。

「答えろ、成歩堂」

目を開けると、真っ直ぐにぼくを見据える双眸。いつもは目をあわすことが苦手な、君の瞳。
ただ、それが。

「御剣……怖いんだ」

再び目を閉じてぼくは、キスをねだった。
御剣はそのままそれに答えた。次第に激しくなる口付けに、めまいがする。

君と目を合わせると、全てが吹っ飛ぶ。
止められない。止まらなくなるんだよ。 それが、怖い。

全てを欲しがる、このぼくを。





「あっ…あっあっあっ……!!」

自分のなかでうごめく存在に、気が遠くなりそうだ。
両足の腿の部分を手で押さえ込まれ、そのまま胸に押し付けられる。
腰が浮いて、まるで接合部分を突き出してるみたいな格好が恥ずかしい。

「や、やだっ…やめ…って、みつるぎ……!」
「……やめてもいいのか?」

ぐい、とまた力を込められる。
いつもこうだ。こうやって、屈辱な思いをするのはぼくの方で、御剣は笑いを浮かべてぼくに問いかける。
────やめていいのか、って。

「んぁっ!…そ、そんなこ、と……ああッ!!」
「ふ……」

笑った後、御剣はいきなり腰を引いた。

「あ…っ…」
「やめてもいいのだろう……?」

さっきまで限界まで押し広げられていたそこが、急に開放されて震えているのが自分でもわかった。
まるで欲しがるように収縮するそこを、御剣が嬉しそうに眺める。

「……い…やだ……みつるぎ」

中途半端に高められた熱がじわじわと脳を刺激する。……もっと、欲しいと。

「成歩堂……来い」

まるで呪文のように呟いて、御剣がぼくを促した。ぼくは身体を起こし、横たわった御剣に恐る恐るまたがる。
後ろに触れる、御剣の熱に怯えながら。

「どうしてほしいんだ…?成歩堂」

恥ずかしさに耐え切れなくなって、ぼくは目を閉じて首を振る。流れた涙に御剣の指が触れた。

「では……質問を変えよう……何が、欲しいのか?」
(なにが………?)

頭の中でその質問を反芻する。一体ぼくは、何が欲しい?

「成歩堂」

ふいに名前を呼ばれ、びくりと身体が震える。目を開けると、ぼくの答えを待つ御剣が見えた。
ぼくの欲しいもの。ずっとずっと昔から。そして今だって、ずっと欲しがっているもの。
───そんなの、わかりきってることじゃないか。

「………………みつるぎ」

乾いた口を動かして、ぼくは答えた。とても小さな声で。

「御剣が欲しい………」

そして背中を屈めキスをする。舌を出して、丁寧に優しく。ありったけの想いを込めて。

「もっと、してよ……」

口を離して、ぼくはそう懇願した。御剣は満足げに笑うと、微かに頷いた。
腕が腰に回される。下から思い切り突き入れられ、ぼくは泣いた。
喜びと快感に翻弄されながら。

「……ああっん…んッ…みつるぎ、…御剣ッ!!」

欲しい、欲しい。もっと欲しい。
君が欲しい。全部欲しい。
いつの間にか御剣の手は離れて、ぼくは自分自身で腰を動かす。
擦り付けて、うごめいて、攻め立てて。

「な、なるほど……っ」

快感で御剣の顔が歪む。それでもぼくは動きを止めない。動いて、動いて。
君が全部、ぼくに飲まれるまで。

───ッ!…ま、待て、成歩堂!」
「………待たない」

制止する声を無視して、ぼくは動きを早めた。御剣がその欲望を吐き出すまで。
ぼくの中全部、御剣で満たされる瞬間まで。

「………ッ…ふぅ…っ!!」

御剣がぼくの下でうめいた。そして、緩やかに広がっていく生暖かい感触。
愛しい、御剣のもの。
息を荒くして御剣がぼくを見上げた。その目に向かって、ぼくは無理に笑ってみせる。

「……何か、不満……?」
「……………いや……」

どこか悔しげに御剣は答えた。ぼくは御剣のものを自分の中に収めたまま、背をかがめてキスをした。
身じろぎして反応しはじめた御剣に、再び情欲のキスを。

 

全部。全部。
全部、君が欲しい。もっと、もっとしてくれ、御剣。

 


●   
・.

 

















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んなわけで、異様に欲しがるなるほどくんでした!
普段自分は人の目をじっと見るくせに、ミタンにじっと見られたら欲情しちゃうんすよ。
タイトルはホフディランの曲の歌詞からです。
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