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ぬらぬらと身体を光らせて成歩堂は私の上に跨っていた。
最初成歩堂が繋がることを拒んだため、使用したローションの量がいつもより多い。
彼の首筋、胸から腹、腿の外側と内側。そして足の中心にある彼のものまでも。
まんべんなく振り掛けられた液体が彼の身体を湿らせ光らせていて、それがとてもいやらしい。

「…ん、ぁ、…」

微かな声に気付いた私はゆっくりと視線を上げる。卑猥に光る身体から彼の表情へと。
しかし成歩堂の艶かしく喘ぐ表情は見えなかった。
彼の両手首は自身の赤いネクタイで縛められている。そして彼の両眼は私のタイで固く覆われている。
成歩堂は手首を拘束され、そして視界を奪われた状態で私に犯されていた。
腰を大きく動かす。上に乗る彼の身体の奥をかき混ぜるように。成歩堂は吐息を漏らす。私は思わず笑いをこぼす。
普段自分たちが使う物を使ってこのような行為をするのは、より一段と卑猥に感じる。
そうは思わないか?
その問い掛けは実際に口に出さず唇だけを歪めると、代わりにもう一度腰を動かした。それを受けて成歩堂は再度弱々しく喘ぐ。しばらく上下に揺り動かされた後。

「こんな…っこと、して…ッ」

成歩堂は振動とともに細かく言葉を零す。

「ゆ、ゆるさない……から、な……っ…アッ!」

切なげな喘ぎを漏らしていたかと思えば、非難の声を上げ私を責める。
言葉の間に挟まる、途切れ途切れのの甘い息。私はさらに薄い笑いを浮かべ、上に乗せる彼を見上げた。
私の胸に手のひらを当て、上体を起こす体勢を保とうと必死に両腕を突っ張る。それが身体を無理にでも開かされた最後の抵抗であり、彼の自尊心を守る働きをしていることを私は知っている。
そんな風に反発できるのも最初のうちだ。いつまで持つだろうか、などと時間を予想して逆に楽しんでいる自分がいる。

「……まだまだ、仕置きが足りないようだな」

なに、と彼の唇が動いた気がした。私はそれを確かめずに彼の腰を掴んで持ち上げ、自分を引き抜く。
互いが離れると同時に液体と繋がっていた部分が擦れてどこか悲しげな音を立てた。
上に乗せていた成歩堂の腕を掴んで乱暴に引っ張ると、今度は床に這いつくばらせる。そしてそのまま膝だけを立たせた。ひたり、と熱く濡れた後ろに棒を押し当てた後。
視界を奪われ、ろくに抵抗もできない彼の身体に再び自分を埋め込んでいく。

「あ」

背中をこちらに向けたまま、成歩堂は腰を振ってそれを嫌がる。しかし私はやめない。
抵抗を無視し、徐々にめり込んでいく熱の棒。挿入されているというよりは突き刺さっているようにも見えるその状態を、私は表情を消して見つめた。

「いや……だ、やだ!」

ついに涙混じりになってしまった成歩堂の声は、私を抑制することはできなかった。突き刺したそれを引き出し、また無理に押し込む。始まった律動に成歩堂は声を上げるのを止めた。私からは見えないが、唇を死ぬほど噛み締めているのだろう。
こうして後ろから犯すのは嗜虐心が多大に煽られる。彼が両手と両足を地に付いているため、腕に抱えるものが無くなる。なので私は何の邪魔もなく腰を振ることが出来る。反動と勢いで中を荒らして攻めると成歩堂の声は一段と大きくなった。それと同時にぎしぎしとベッドも鳴る。

「っあ、っ、あ、…あっ!」

成歩堂は声を上げ、背中を丸めてその攻め立てに耐える。でも体勢を変えることは許されない。
私は彼の腰を抱え込んだまままた突き上げた。成歩堂がまた声を上げた。
何度彼の中に突き立てても、何度彼を喘がせても。
足りない。足りない。私の心は荒々しく叫ぶばかりだった。
───足りない。
また脳裏に浮かんだ言葉に抗うことなく私は、また大きく彼を突き上げた。








繋がってからどれくらいの時間が経っているのだろう。
自分の上で成歩堂は喘ぐ。私は壁に背をつけ、成歩堂の身体を自分の腰に乗せて彼を犯していた。
腰を少しだけ持ち上げ、そして落とすだけで彼の身体は面白いくらいに反応した。彼のものは数十分前に比べるとやや張り詰めは緩んできていたはものの、それでもゆるい弧を描き、私から与えられる快楽にゆらゆらと揺れる。二人の繋がる部分はぐちゅぐちゅと生々しく、耐えず卑猥な音をたてていた。
そんな状態にもかかわらず成歩堂は私が凭れる壁に縋りつくようにして両手の爪を立てていた。体重全部が私の上にかかるのを避け、必死に歯を食いしばる。目隠しも両手首の拘束も外されていない。
自分の上で乱れる彼の表情をどこか冷めた目で見つめる。シーツにこぼれた液体がいくつもの染みを作り出していた。
縛った手首を掴まえて自分に引き寄せる。逃れようと暴れる身体を抱きかかえて耳元に唇を寄せた。
吐息が耳に触れるようにわざとゆっくりと囁く。

「気持ちいいだろう……?」

強張りがさらに強くなる。と、同時に収めてあった私のものがきゅっと締め付けられた。その反応に思わず笑ってしまう。私は一度息を吸い込むと、再度目隠しされたまま喘ぐ彼へと尋ねた。

「久々に犯されて、気持ちがいいだろう?成歩堂」
「……くっ」

成歩堂はその問いに答えることはしなかった。自分の唇を色が変わるまで噛み、激しく首を横に振る。
私はそのまま彼の下半身へと視線を落とした。限界には達していないもののそれは確かにいつもよりも硬い。

「嘘はよくないぞ」

低い声でそう諌める。棒を握り、そのまま力をこめた。成歩堂の唇から息が漏れる。
私は唇を歪めると手を上下に動かし始めた。もっともっと反るように促されたそれは、次第に熱を帯びて体積を広げる。それにつられて吐き出される成歩堂の息が短く変化していく。私は指を動かしながらゆっくりと口を開く。彼の様子を窺いながら耳元に囁きを落とした。

「君にこんな快楽を与えられるのは私だけなのだぞ?」

問い掛ける口調はやめない。
成歩堂は短い息と途切れ途切れの声を漏らしつつ、身体を仰け反らせた。繋がったまま離れようとする身体を腰に手を回してさらに引き寄せて。低い声で囁く。

「長い間、私に連絡もせず……一体何をしていたのだ?」

成歩堂の逆転勝訴を報じる記事が発表されたのは昨日のことだ。起訴から裁判までの数日間。寝る間も惜しんで事件現場と留置所を駆け回っていたことなど、聞かずとも予想はつく。
そう予想はついていても、答える余裕がないことを知っていても。

「君がいないと……不安で堪らなくなるのだよ。私は」

不安で不安で。ただそれだけが自分を支配して、相手に向けられる感情が全て黒いものにすり替えられる。
激しく深い思慕がやがて恐怖へと成長する。恐怖とそれと、思い通りにならない怒りと。
不意に湧いた感情を忘れるため、腰を更に動かした。接する粘膜がぐちゅぐちゅとはしたない音をたてた。
私の突き上げる動きと、上に乗る成歩堂の身体の重みと。双方が相成ってこれ以上ないくらいに私が成歩堂の中に納められているのを感じた。それでも私は成歩堂の腰を掴み、更に自分の腰をそれに押し付けた。
もっと、もっと奥に入り込みたい。彼のことを考えるたびに生まれる不安、怒り。それら全てを蹴散らすような快楽を手に入れたい。そして、彼の身体に同様なものを与えたい。
離れている時間が不安で不安で堪らないから。

「……あ、ん、ァ、…っ」

成歩堂は短い声を上げて喘ぐ。目隠しをされたまま顎を少しだけ上にあげる。浮かんだ喉仏に舌を触れさせた。二人が揺れる振動が起こるたびに、それはひくひくと動いていた。反応を見せる様子を愛おしく感じ、吸い付くようにして唇で愛撫する。
それでも言葉を紡ごうと成歩堂は必死だった。

「…そ、んなの…っ」

知らない、と彼は言いたいのだろうか。
私がどんなに不安を感じようとも、それは自分には関係ないと。
あまりにも身勝手な言い分に苛立ちが生まれた。
不安や迷い。私が余計な感情だと、自ら切り捨てた感情の数々。それを余計なものじゃないと言い、もう一度与えさせたのは彼だ。私が、かつての師が。完璧な検事を作るために封じ込めた感情と真実を、法廷で全て暴いた弁護士。
彼の存在が私を不安にさせる原因なのに。

「あ…ッ!」

奥の奥にまで捻じ込んでいた性器を一気に引き抜いた。摩擦で火傷してしまいそうな衝撃に成歩堂が悲鳴を上げる。そのまま腕を掴んでベッドに投げ出した。
成歩堂は全身を精液で汚し、そこに横たわっていた。激しい疲労で動くこともままならずに、小さく身動ぎをするだけの彼を見下ろす。
きつく縛ってあった手首の拘束と目隠しをゆっくりと外した。汗か涙か、湿ったまつ毛が微かに瞬かれ、潤んだ黒目が覗く。
長時間身体に与えられた快楽を受け取りきれずに、ぼうっとした顔で私を見上げる彼の頬に触れた。

───出会うべきではなかった。おかげで私の中に、余計な感情がよみがえった。不安……そして迷いだ』
『それは、余計な感情じゃないだろう?』

そう言った彼の瞳を今でも覚えている。真っ直ぐで、恐れを知らない。強気で無謀ともいえる黒い瞳で私を射抜く。
それは今ではどろりと濁り、私を見つめていた。混沌に沈む成歩堂の双眸。私の嫉妬を受け散々弄ばれた身体。渇いた唇が、何かを言おうと微かに動く。
見ているうちにじわじわと笑みが浮かんできた。

成歩堂。君はまだ、前と同じことが言えるのか?こんなことをされているのに?
それでも君は余計な感情じゃないと言うのだろうか。
この渦巻く黒い感情を。異常な感情を。

疲れ果てている彼を可哀想と思うのに、その姿に興奮している自分が確かにいた。
覆い被さって膝の裏に手を運び、再び身体を開かせる。大した抵抗もできない成歩堂は嫌だ、と小さく呟いた。それだけでは私の心は塞がらない。不安で空いてしまった大きな穴は開く一方だ。
そのためには早く、深く深く繋がらなくては。
精液で濡れるその場所に性器を擦り付ける。手で支えなくても、温かく解けたそこはすぐに私を中に導いた。ああ、と成歩堂が喘ぎともつかない声を上げた。
濡れた粘膜が私を包み込む。思わず、長い息を吐き出した。低い声の囁きとともに。

「君が、いけないのだ」



君が、私を怒らせたのだから。
君が、私に感情を与えたのだから。
君が、私を救ったのだから。



 

 

 

 

 

 

 

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1の黒い検事っぽく。
鬼畜検事ならこれくらいはやってそう!


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